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旅の二十四:「旧官営富岡製糸場 その2」 ◆写真をクリックすると、
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今回も「富岡製糸場」、その2回目の調査について書きたいと思います。
今回私が担当した建物は、前回の寄宿舎と同時期の、昭和15年に建てられた診療所と病室の2棟です。

診療所と病室は、建物の用途や性質からちょっと不気味な感じを周辺に漂わせ、私は前回の調査時にも何か異質な他の工場棟や洋館とは違った雰囲気を感じており、今回もけっこう恐る恐る建物の中に入りました。
(そのへんの雰囲気、写真から伝わりませんか?)

診療所と病室は東西に長く伸びた2棟が、南北平行に建っており、南側に病室、北側に診療所とそれらを繋ぐ渡り廊下が間にあります。

まずは診療所からぐるりと一回りしました。
西側より診療室・手術室・調剤室の各部屋が中廊下の両側に並んでいます。
手術室の真っ白なタイル貼りの床と壁には、何故か一瞬ドキッとさせられました。
診療室には何も記載されていないカルテがほこりを被っていたり、調剤室には包帯や薬品のビンが雑然と置かれたままになっているなど、最盛期には多くの人が利用したんだろうなと感じさせます。
その奥に看護婦室・食堂・炊事場・病室などがあり、さらに奥の渡り廊下で隔てた部分には、別棟の隔離病室が東端にありました。
つづいて病室棟。北側に東西真直ぐ伸びた廊下に10畳の和室が4室と、8畳の和室が1室の計5室が並んでおり、その東端に便所があり、病室の南側には縁側がありました。

こうして一回りして、いよいよ実測調査です。
寄宿舎と違い改造もそれほどなく、また傷みも酷くなく調査は順調に進みました。
寄宿舎と同時期に建てられただけに、意匠や細部の納まり、仕様なども良く似ているのですが、使用頻度や用途の違いからか建物の修繕や改造、劣化具合はあきらかに違っています。

また、病室には押し入れもなく、当然、寄宿舎のようなポスターはおろか、カレンダー一枚すら見当たらず、私的な部分はまったくありませんでした。
診療所と病室も、最盛期にはかなり使われていたのでしょうが、最後の頃には保健室的な役割で、若い女工さんのホームシックの相談など精神的なケアが多かったようです。
ここには「私物」のかわりに、そうした形の見えない「思い」がひっそりと残っているのかも知れません。
そんなこんなで、ちょっと不気味(?)な、診療所と病室の調査は無事終りました。

まだまだ広い富岡製糸場。さて、次回は何の建物の調査になるのでしょうか?























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